小説Git 5: VS CodeのGit拡張機能

初めて使うGit、初めて使うコマンドラインインターフェイス(CLI)はどうでしたか?

緊張したかもしれませんし、もう懲り懲りだと思った方もいたかもしれませんが、ご安心ください。VS CodeのようなGit対応エディタを使うと、ターミナルを通さずにGitによるバージョン管理ができます。

まずはGit Graph(ギットグラフ)をインストールしてみましょう。❶アクティビティバー拡張機能をクリックし、❷検索フィールドに git graph と入力します。トップに出てくるGit Graphの❸インストールボタンをクリックするとインストールが終わります。

アクティビティバーでソース管理をクリックし、サイドパネル上部のツールバーを見ると、Git Graphのアイコンが増えています。前回作ったレポジトリを開いた状態でGit Graphのアイコンをクリックすると、エディターグループにGit Graphで管理されるレポジトリのコミット履歴が表示されます。

太字になっているのが、現在の状態です。小説Git 4を最後までやった方は、最後にcheckout(チェックアウト)した「プロローグ冒頭」のバージョンが太字になっているはずです。ではここで、最新のコミット「言い切りに変更」にチェックアウトして、ファイルの状態を最新版に変更してみましょう。

ターミナルは要りません。

「言い切りに変更」の行にあるを右クリックして、Checkout Branch を選んでください。

Git Graphの状態が変わります
ファイルも最新の状態に戻りました

実行すると、main言い切りに変更の両方が太字になります。ブランチについては、特別に章をあらためて解説します。

前回、git checkout 889989364af1369562f82a78d8f7662fa255bae3 で行ったチェックアウトはGit Graphを使うことで右クリックから実行できるようになりました。

それでは、もう少しだけGit GraphとVS Codeを見ていきましょう。

Git Graphで最新のコミット名をクリックしてください。操作方法は、アクティビティバーでソース管理をクリック❶し、Git Graphを表示❷させ、コミット名(ここでは「言い切りに変更」)を選択❸すると、コミット情報パネルが表示されます。

パネルの右ペインにはコミットのハッシュID(前回使った長い英数文字列です)、コミットしたユーザーの名前とメールアドレス、コミットの日時、コミットの名前が表示されます。

左ペインには、変更されたファイルが表示されます。前回はプロローグ.txtだけ編集しているので、一つしか表示されていません。

ここで プロローグ.txt ( +1 | -1) をクリックすると、このコミットと前回のコミットの違いを差分エディターで開いて見ることができます。

差分エディターで開いたところ
拡大表示

左が前回のコミットの時の状態で、右が新しくコミットしたファイルです。変更のあった行に色がついているのがすぐにわかりますが、その中でも変更した文字にはさらに濃い(明るい)ハイライトがついています。

VS CodeとGit Graphを使うことで、ほとんどターミナルに触ることなくGitを使うことができるようになります。

次回は実践的なファイルを使ってファイルを管理してみましょう。

コンテンツ一覧

  1. 小説Git 1:はじめに
  2. 小説Git 2:黒い画面でタタタターン
  3. 小説Git 3:VS Codeのインストールと最低限の設定
  4. 小説Git 4:Gitのインストール
  5. 小説Git 5: VS CodeのGit拡張機能

小説Git 4:Gitのインストール

お待たせしました。Gitのインストールを始めましょう。手順は以下の通りです。

  1. VS Codeでターミナルを立ち上げる
  2. Homebrewのインストール
  3. Gitのインストール
  4. 動作確認

HomebrewはMac OS用のオープンソースソフトウェアパッケージ管理ソフトウェアです。この説明で意味のわかる方は、1. Homebrewのインストールに進んでください。Windowsをお使いの方は、Google検索などで探してみてください。

小説Git 2:黒い画面でタタタターンでも書いたように、コンピューターの中には、アイコンがついていて独自のウインドウを持ち、マウスやタッチで操作できるグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)のアプリ以外にも、多くのソフトウェアが動いています。Gitも含め、それらの多くはプログラムのソースコードが公開されていて、誰でも組み立てて使うことのできるオープンソースソフトウェア(OSS)で、Homebrewは、そんなOSSをダウンロードしてインストールしたり、アップグレードしたりするソフトウェアです。

「なんだ、インストーラーみたいなものか」という印象を持たれたかもしれません。扱う上では「黒い画面で使うソフトをインストールするプログラム」程度に考えておけばいいでしょうが、起動したときに画面に流れる大量のログを見て驚かないように、少しだけ補足しておきます。

多くのOSSは、他の多数のOSSに依存しています。例えばプログラミング言語のPythonは以下のようなソフトウェアに依存しています。

python@3.9
├── gdbm
├── mpdecimal
├── openssl@1.1
│   └── ca-certificates
├── readline
├── sqlite
│   └── readline
└── xz

つまり、Pythonを動かすには、gdbm、mpdecimal、openssl@1.1とopenssl@1.1が依存しているca-certificates、readline、sqliteと、sqliteが依存しているreadline、xzの7つのOSSが必要になります。簡単に想像できると思いますが一つ一つをインストールしていくのでは大変ですし、何より間違いも起こります。

そこで、このような依存関係を管理するパッケージ管理ソフトウェアが必要です。ターミナルでbrew install python@3.9 と入力すると、Homebrewはレシピに従って依存する7つのソフトウェアを、必要なバージョンも確かめながらインストールします。

インストール中、ターミナルには自分が入力した覚えのないソフトウェアの名前がずらずらと並ぶことになりますが、怖がらずによく見てください。それはHomebrewが依存関係を解消するために必要なソフトウェアをかき集めているところなのです。

ちなみに、Gitの依存ツリーは以下の通り。

git
├── gettext
└── pcre2

多機能ぶりを考えると信じられないぐらいシンプルですが、それでもインストールすると、下記のログが画面を流れていきます。

==> Downloading https://ghcr.io/v2/homebrew/cor
Already downloaded: /Users/taiyo/Library/Caches/Homebrew/downloads/55b48329bd6c0c280bccbfcdd2e977bda9fba5fb7d7061e9323dae9142f3efb1--git-2.37.0.bottle_manifest.json
==> Downloading https://ghcr.io/v2/homebrew/cor
Already downloaded: /Users/taiyo/Library/Caches/Homebrew/downloads/f691c27a9f4a36e8760104c596627d982bffb4b52a2669cc5076462e12368191--git--2.37.0.monterey.bottle.tar.gz
==> Reinstalling git
==> Pouring git--2.37.0.monterey.bottle.tar.gz
==> Caveats
The Tcl/Tk GUIs (e.g. gitk, git-gui) are now in the git-gui formula.
Subversion interoperability (git-svn) is now in the git-svn formula.

zsh completions and functions have been installed to:
/usr/local/share/zsh/site-functions

Emacs Lisp files have been installed to:
/usr/local/share/emacs/site-lisp/git
==> Summary
🍺 /usr/local/Cellar/git/2.37.0: 1,552 files, 44.6MB
==> Running brew cleanup git…
Disable this behaviour by setting HOMEBREW_NO_INSTALL_CLEANUP.
Hide these hints with HOMEBREW_NO_ENV_HINTS (see man brew).

それでは、インストールです。小説Git 2で説明したVS Codeのインストールはお済みですか?

1. VS Codeでターミナルを立ち上げる

VS Codeを起動して、ウインドウのタイトルバーの右端に並んでいる❶パネル表示ボタン(下)をクリックしてパネルを表示させ、ウインドウの下部に現れるパネルの切り替えボタンからTERMINAL(ターミナル)をクリックすると、パネルの中には文字入力のコマンドで対話的にコンピューターを操作する環境「ターミナル」が現れます。

VS Codeのパネルにはさまざまな機能がありますが、小説Gitではターミナルしか使いません。

ターミナルに表示されている文字は、コマンドの入力を受け付けられる状態であることを示しています。この文字列のことをプロンプト、あるいはコマンドプロンプトと呼びます。

taiyofujii@iMac ~ %

ユーザー名:taiyofujii
コンピューター名:iMac
場所:~ (ホームの略称)
動作モード:% 一般ユーザー
■:カーソル

基本的なコマンドを入力してみましょう。小説を書いているときは使わなくても構いませんが、Gitのインストールやトラブルシューティングなどで、たまに必要になりますので、覚えておいてください。

最も基本的なコマンドの「cd(シーディー:change directoryの略称)」を使って、デスクトップに移動してみましょう。

yourname@yourMac ~ % cd Desktop↩️(リターンキー)
yourname@yourMac Desktop % ■

プロンプトの場所がDesktopに変わりました。日本語Mac OSのファインダーでは「デスクトップ」と表示されていますが、ターミナルでは「Desktop」と表記されます。

それでは、ホームに戻りましょう。

yourname@yourMac Desktop % cd
yourname@yourMac ~ % ■

cdの後に何も指定しなければホームディレクトリに戻ります。日本語Mac OSのファインダーではホームフォルダです。呼び方が異なりますが、ディレクトリとフォルダはほとんど同じものだと考えても構いません。ファイルを置いてある場所です。CLIではディレクトリと呼び、GUIでは書類バサミ(フォルダー)のメタファーを使ってフォルダーと呼びます。小説Gitでは両方の呼び方を、おそらく意識せずに使い分けていきます。

「ホーム」とホームディレクトリが同じ場所だということを確かめるために、「ls(エルエス:listの略)」コマンドを使って内容を一覧表示してみましょう。

yourname@yourMac ~ % ls↩️

Applications            Documents               Public                  
Downloads               Movies                  Music                   
Desktop                 Library                 Pictures

yourname@yourMac ~ % ■

英語で表記されていますがMacの「ホーム」に並んでいるフォルダーがあることがわかります。

ここで、小説Gitで時々使うMac用のコマンドをひとつ紹介します。「open」という、ターミナルから、Mac OSのファインダーを通して指定したファイルを開くコマンドです。コマンドラインであなたのMacを操作できることを体験してみてください。

yourname@yourMac ~ % open .↩️(ピリオド+改行)

## ピリオドは「この場所」を意味します。
## プロンプトに示される「場所」がホームディレクトリなので、
## open . はホームディレクトリをファインダーで開け、という意味になります。

ファインダーでホームのウインドウが開きます。

それではHomebrewをインストールしましょう。

2. Homebrewのインストール

Homebrewの公式Webサイトに、インストールの方法が書いてありますので解説します。

下のコマンドをコピーして(先頭の/から最後の”まで)、ターミナルにペーストし、リターンキーを押してください。

/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"

不安でしょうから、コマンドの意味を解説します。説明が鬱陶しい方は、一画面分ぐらい飛ばしてください。

先頭の「/bin/bash」で、インストールのためのスクリプト(手続き書です)を実行するプログラム、bash(バッシュ)を指定しています。bashはシェルと呼ばれるプログラムの一つで、ファイル操作やプログラムの起動に用います。

/bin/bashの後ろについている「-c」はbashの動作モードを指定しています。-cは、この後ろにある文字列を評価する、という意味を持ちます。「評価」というと難しいですが、bashを立ち上げて、”(ダブルクオート)で挟まれる文字列を入力し、リターンキーを叩け、ということになります。

ダブルクオートで挟まれた文字列は、bashで実行するコマンドです。内容は、curl(カール)を起動し、githubsecontent.comからHomebrewのインストールスクリプトをダウンロードして、$(管理者モード)で実行せよ、という意味です。

さて、実行しましょう。

==> Checking for sudo access (which may request your password)…
Password:

すぐにこのようなプロンプトが表示されます。ここで、Macの管理者パスワードを入力してください。

==> This script will install:
/usr/local/bin/brew
/usr/local/share/doc/homebrew
/usr/local/share/man/man1/brew.1
/usr/local/share/zsh/site-functions/_brew
/usr/local/etc/bash_completion.d/brew
/usr/local/Homebrew

Press RETURN/ENTER to continue or any other key to abort:

インストールを実行するかどうかを確認するプロンプトが表示されます。リターンキー、あるいはエンターキーを押すとHomebrewのインストールが始まります。

ひょっとするとこの段階で、xcode command line toolsをインストールするか、Xcodeをインストールするか選ぶように求められるかもしれません。その場合にはxcode command line toolsを選んでください。これを機会にMacやiPhoneのアプリを作ってみたいと思う方はXCodeをインストールするといいでしょう。

==> Downloading and installing Homebrew...
remote: Enumerating objects: 498, done.
remote: Counting objects: 100% (498/498), done.
remote: Compressing objects: 100% (363/363), done.
remote: Total 476 (delta 152), reused 282 (delta 86), pack-reused 0
Receiving objects: 100% (476/476), 289.21 KiB | 50.00 KiB/s, done.
Resolving deltas: 100% (152/152), completed with 16 local objects.
From https://github.com/Homebrew/brew
   8dd96ae8b..3689ecd24  master     -> origin/master
Updating files: 100% (3162/3162), done.
HEAD is now at 3689ecd24 Merge pull request #13551 from Homebrew/dependabot/bundler/Library/Homebrew/activesupport-6.1.6.1
Updated 3 taps (homebrew/core, homebrew/cask and caskroom/cask).
==> Installation successful!

==> Homebrew has enabled anonymous aggregate formulae and cask analytics.
Read the analytics documentation (and how to opt-out) here:
  https://docs.brew.sh/Analytics
No analytics data has been sent yet (nor will any be during this install run).

==> Homebrew is run entirely by unpaid volunteers. Please consider donating:
  https://github.com/Homebrew/brew#donations

==> Next steps:
- Run brew help to get started
- Further documentation:
    https://docs.brew.sh

yourname@yourMac $ ■

インストールが終了すると、コマンドプロンプトが入力待ちに戻ります。では、インストールが終わったかどうかを確かめてみましょう。

brew -v と入力します。brewはHomebrewのコマンド名です(長いですからね)。-vはバージョン表示を行う動作オプションです。

yourname@yourMac ~ % brew -v↩️
Homebrew 3.5.4
Homebrew/homebrew-core (git revision 3112e690293; last commit 2022-07-12)
Homebrew/homebrew-cask (git revision 7ba04fd629; last commit 2022-07-13)

バージョン名が表示されたら、インストールができたことになります。それではGitのインストールに進みましょう。

3. Gitのインストール

Gitの配布サイトにある、Download for Macページに、インストールの方法が書いてあります。

Homebrewのインストールは終わっているので、Homebrewでインストールする方法でインストールします。コマンドをコピーして実行します。

yourname@yourMac % brew install git↩️

==> Downloading https://ghcr.io/v2/homebrew/core/git/manifests/2.37.0
Already downloaded: /Users/yourname/Library/Caches/Homebrew/downloads/55b48329bd6c0c280bccbfcdd2e977bda9fba5fb7d7061e9323dae9142f3efb1--git-2.37.0.bottle_manifest.json
...

  /usr/local/share/emacs/site-lisp/git
==> Summary
🍺  /usr/local/Cellar/git/2.37.0: 1,552 files, 44.6MB
==> Running `brew cleanup git`...
Disable this behaviour by setting HOMEBREW_NO_INSTALL_CLEANUP.
Hide these hints with HOMEBREW_NO_ENV_HINTS (see `man brew`).

yourname@yourMac % ■

バージョンを確認しましょう。

yourname@yourMac % git -v↩️
git version 2.37.0

おめでとうございます。Gitがインストールできました。

Gitの初期設定を行なって動作確認をしていきましょう。利用者の名前と、メールアドレスを設定します。この名前とメールアドレスは後で使うソースコード管理サービスGitHubのアカウントと同一にしておくことをお勧めします。アカウントを作ったことがある人は、GitHubのアカウント名とメールアドレスを入力してください。

git config --global user.name 任意の名前、英数↩️
git config --global user.email サービス利用に使うメールアドレス↩️

4. 動作確認

おつかれさまでした。それではデスクトップにフォルダーを一つ作って、Gitが動くかどうか確かめてみましょう。

サイドバーのエクスプローラーソース管理をクリックして、サイドパネルのフォルダーを開くをクリックし、デスクトップに新しいフォルダーを作って、そのフォルダーを開いてください。流れを下にスクリーンショットで示します。

フォルダーを開くと、前回のインストラクションでも表示されたアラートが現れます。たった今作ったフォルダーですので安心して「はい、作成者を信頼します」ボタンをクリックしてください。

エクスプローラーでファイルをひとつ作り、何か書いて保存しましょう。

Gitの動作確認からは外れますが、ここでタイムラインをクリックすると保存したファイルの履歴が一覧できます。自動保存していると、ほぼ全ての編集履歴をこの「タイムライン」で追いかけることもできますので「あーっ! さっき消しちゃった文章どこだー!」と探すような時は、エクスプローラータイムラインを探してみましょう。

本当にお待たせしました。それでは、新しく作ったフォルダーをGitで管理しはじめます。

アクティビティバーのソース管理をクリックし、サイドパネルのリポジトリを初期化するをクリックします。Gitは管理するファイル群のまとまりを「リポジトリ」と呼びます。

初期化を行うと、サイドパネルの内容が変わります。

それぞれの意味合いはこれから小説Gitで説明していきますので、まずは「バージョン管理」を試してみましょう。

ファイルの横にマウスポインターを移動させ「+」ボタンをクリックします。

ファイルが「変更」タブから「ステージされている変更」に移動します。この操作を「ステージング」と呼びます。ステージにされた変更に名前をつけてコミットします。ここでは「プロローグ冒頭」と名前をつけ、コミットをクリックします。

何が起こっているのかわからないので辛いと思いますが、ファイルを修正して、再度「ステージング→コミット」をしておきます。同じ名前でコミットしても構いませんが、別の名前に変えておきましょう。

ここでターミナルを開いて、git log↩️を実行してみましょう。

ターミナルには以下のようなテキストが出てきて、二つの状態があることがわかります。

yourname@yourMac 傑作 % git log
commit 53f582de2ff7472af9df2503deb8b45dc23d0c46 (HEAD, main)
Author: Taiyo Fujii <taiyo@taiyolab.com>
Date:   Wed Jul 13 10:27:59 2022 +0900

    言い切りに変更

commit 889989364af1369562f82a78d8f7662fa255bae3
Author: Taiyo Fujii <taiyo@taiyolab.com>
Date:   Wed Jul 13 10:18:08 2022 +0900

    プロローグ冒頭
yourname@yourMac 傑作 % 

ここで、以下のコマンドを実行してみてください。色文字で示したcheckoutの後ろには、git logで出てきたハッシュを入れます。

git checkout 889989364af1369562f82a78d8f7662fa255bae3↩️

ファイルの状態が「プロローグ冒頭」に戻ります。Gitによるバージョン管理の第一歩です。次回からはVS Codeの機能拡張を用いたバージョン管理へと進んでいきます。

機能拡張のGit Graphでこのレポジトリを見ているところ

コンテンツ一覧

  1. 小説Git 1:はじめに
  2. 小説Git 2:黒い画面でタタタターン
  3. 小説Git 3:VS Codeのインストールと最低限の設定
  4. 小説Git 4:Gitのインストール
  5. 小説Git 5: VS CodeのGit拡張機能

小説Git 3:VS Codeのインストールと最低限の設定

それではVisual Studio Code―VS Code(ブイエスコード)をインストールしましょう。VS CodeはMicrosoftのソフトウェア開発環境「Visual Studio(ビジュアルスタジオ)」のWebサイトからダウンロードできます。

VS Code公式Webサイト

ダウンロードしたVS Codeをアプリケーションフォルダーに移動します。小説GitではMac版で説明することが多くなりますが、WindowsやLinux(Chromebook)などをお使いの方は、適宜読み替えてください。

App Storeの審査を経ていないアプリケーションですので、初回起動時にはセキュリティ警告が表示されます。

システム環境設定セキュリティとプライバシーでVisual Studio Codeの起動が止められたことがわかります。ここで「このまま開く」をクリックし、確認画面でもう一度「開く」をクリックするとVS Codeを起動できます。

VS Codeの起動画面です。

VS Codeの初回起動画面:すぐに日本語化できます。
VS Codeの基本インターフェイス

起動していたらこのまま日本語化まで行いましょう。アクティビティバーの一番下にあるExtensionsをクリックし、検索フィールドにJapaneseと入力してください。Japanese Language Pack for Visual Studio Codeというエクステンションが表示されるので、これをインストールします。

VS Codeを再起動すると、日本語インターフェイスのVS Codeが起動します。

起動画面で促されているように、VS Codeは一つ一つのファイルを開くよりも、フォルダーを開いて作業することを前提に設計されていますので、下のようなフォルダーを開きます。

フォルダーを開くと、制作者を信用するかどうかを確かめるアラートが表示されます。プログラミングエディタならではですね。もちろん信頼してフォルダーを開きます。

アクティビティバーでエクスプローラーをクリックすると、開いたフォルダーの内容がサイドバーに表示されます。ここでファイルを選択すると、ファイルをエディターで編集できます。

画面に収まりきれない長さの行が画面外に延びていますので、日本語を書くために最低限の設定を行います。

アクティビティバーの一番下にある「管理」をクリックし❶、メニューから「設定」を選択する❷と、エディターに設定画面が表示されます。設定項目は無数にあるので、目的の設定を探すには検索する必要があります。検索フィールドに「折り返し」を入力すると❸、Editor: Word Wrapという項目が出てきます。初期設定ではoffになっているので、onに切り替えます❹。これで長い行を折り返すことができるようになりました。

設定画面の構成や設定の方法などが一般的なデスクトップアプリケーションと違うことに戸惑うかもしれませんが、ファイル保存などの基本的な操作は、他のデスクトップアプリケーションと大差ありません。

次はVS Codeの中にある「黒い画面」に向き合って、Gitのインストールに進むことにしましょう。ようやくGitと対面です。

コンテンツ一覧

  1. 小説Git 1:はじめに
  2. 小説Git 2:黒い画面でタタタターン
  3. 小説Git 3:VS Codeのインストールと最低限の設定
  4. 小説Git 4:Gitのインストール
  5. 小説Git 5: VS CodeのGit拡張機能

小説Git 2:黒い画面でタタタターン

緑色の文字だ流れる画面にタタタとコマンドを入力してリターンキーをターンと叩く映像はでハッカーを表現する映像作品はまだまだ後を絶ちません。現実のプログラマーやネットワークエンジニアが映画のように忙しなくコンピューターを操作することはほとんどないのですけどね……とはいえ、この表現のすべてがデタラメというわけではなく「黒い画面」がエンジニアの友であることは間違いのないところです。

小説Gitをご覧になっているコンピューターでは、私たちがマウスやタッチ操作で扱うアプリケーションよりもずっとたくさんのソフトウェアが動いています。

この記事を書いているときに起動していたプロセス数は596個

その多くは人の手の介在しないアプリケーション間通信か、「黒い画面」を通して操作するコマンドラインインターフェイス(CLI: Command Line Interface)でしか動かすことができません。

Linuxで生まれ、CLIを好むソフトウエアエンジニアたちがメンテナンスしているGitも例外ではありません。Gitの主要なインターフェイスは「黒い画面」でコマンドを入力するCLIです。

ファイルの、ある時点での状態を登録予約(ステージング)するには % git add というコマンドを用いますし、予約した状態を登録するには % git commit とタイプします。過去に登録した状態に復元するには % git checkout というコマンドを使います。複数の状態を合成するには % git merge、分岐を操作するには %git branch……

Gitのヘルプ。よく使うコマンドが表示されています。全てを覚える必要はありません。

嫌になりそうですね。わかります。

ですが、GitがCLIでしか操作できないのなら私が小説のためにGitを使うことはなかったし、小説Gitも始まらなかったことでしょう。幸いなことに、多くのアプリケーションがユーザーに代わってGitのコマンドを実行してくれます。

「裏庭の競技場」をVS Codeで編集している画面
登録予約した変更が「ステージされている変更」に、それ以外の変更点が「変更」に並んでいる
エディタ側では11、18、20行目が前回の登録(コミット)から変わっていることがわかる
変更点を登録(コミット)した状態。Git GraphというVS Code用の機能拡張は、変更や分岐、統合の履歴をグラフィカルに表示してくれる

小説Gitでは、Gitの操作のほとんどをVisual Studio Code(VS Code)と、VS Code用のプラグインで行う方法を解説します。私自身は「黒い画面でタタタターン」とやる方が簡単に思うことも多いのですが、できるだけVS Codeで操作する方法を優先して紹介していきます。プログラム開発などでGitに慣れている方から見ると、まだるっこしいところもあるかもしれません。

ただ、「黒い画面」を最小限にとどめようとまでは考えていません。コマンド入力をする方が間違いがない場合や、他に方法がない場合には、躊躇なくコマンドを入力する方法を紹介していきます。

Gitのクラウドサービス、GitHubの機能を用いて分岐を統合していくところ
VS Codeに搭載されているターミナルを使っている

前置きが長くなりました。それでは、次回から環境を作っていきましょう。

コンテンツ一覧

  1. 小説Git 1:はじめに
  2. 小説Git 2:黒い画面でタタタターン
  3. 小説Git 3:VS Codeのインストールと最低限の設定
  4. 小説Git 4:Gitのインストール
  5. 小説Git 5: VS CodeのGit拡張機能

小説Git 1:はじめに

このエントリーに続く一連の記事で、小説の執筆にGitを使う方法について、紹介します。

小説GitではGit対応エディタとしてMicrosoftのVisual Studio Code(VS Code)を用い、リモートレポジトリにはGitHubを使います。他のソフトウェアを使いたい方は、コマンド名などを読み替えてください。Gitのコマンドは可能な限り併記します。スクリーンショットはMac OS版を用いますが、WindowsでもLinuxでも同じように運用できるはずです。

小説をGitで管理し、差分表示に対応したエディタで編集すると、はじめてファイルを登録(コミットと呼びます)した瞬間から入稿に至るファイルの履歴を追いかけられるようになり、連載時に文字数や締め切りの関係で削除することになったエピソードにも簡単にアクセスできるようになります。

東京新聞掲載短編「裏庭の競技場」の執筆履歴
登録作業に名前をつけられるので、何を変更したのかすぐにわかります

また、日々の執筆でも、昨日、または先週からどのように原稿が変化したのかを確かめられるようにもなります。

東京新聞掲載短編:裏庭の競技場の再校と入稿の差分表示
変更のあった行と文字がハイライトされているのがわかる

数千人もの開発者が共同作業することを想定して作られたGitには、分岐したソースコードを評価しながら再統合する機能も搭載されています。今まで、プリントアウトにエンピツを入れていた編集者が分岐(ブランチと呼びます)した原稿に提案を書き込んで修正提案(プルリクエストと呼びます)を行えば、作者は一つ一つの提案を取り入れるか入れないか、すぐに決めることができます。エンピツの入った場所を探すために、マウスホイールを回して数十メートルにも及ぶWordファイルの中を彷徨う必要はなくなります。

技術文書では、すでにGitの管理機能を用いているものも少なくありませんしWebへの公開を前提としたインストラクションはたくさん書かれています。しかし、小説となると、実例を詳しく紹介した読み物はそれほど多くありません。

この記事が、執筆にGitを使おうと考えた方の背中を押せれば幸いです。

さて、どこから始めましょう……

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  1. 小説Git 1:はじめに
  2. 小説Git 2:黒い画面でタタタターン
  3. 小説Git 3:VS Codeのインストールと最低限の設定
  4. 小説Git 4:Gitのインストール
  5. 小説Git 5: VS CodeのGit拡張機能