2022年にWired Sci-Fiプロトタイピング研究所と行なったSFプロトタイピングが本になります。
未来の「奇縁」はヴァースを超えて―「出会い」と「コラボレーション」の未来をSFプロトタイピング
定価:本体2,182円+税
発行:コンデナスト・ジャパン
発売:プレジデント社



著者は藤井太洋、高山羽根子、倉田タカシ、Sansan株式会社、そしてワークショップを実施したWired Sci-Fiプロトタイピング研究所です。このほかにも、北村みなみさんのコミックや、小川さやかさんの講演録、そしてSansan株式会社の田邉泰さんの作品とインタビューが収録されています。写真では伝わりにくのですが、書籍は鮮やかな特色ピンクで、小口にも塗りが施されています。
私が寄稿した作品は「二千人のわたしたち」。ユーザーのエージェントが自律的に活動する未来を描いた作品です。
SFプロトタイピングは、企業や自治体などの組織がSF的な思考法で事業を捉えなおす活動です。SF作家を招いて事業を説明し、企業と業界の未来を描いてもらう簡単なものから、企業内で募ったスタッフにSFを書いてもらうワークショップを含んだもの、またはSF作家と長い期間をかけて話し合い(手持ちの技術と資源から未来を予測するフォワードキャストとは異なる)バックキャストによる事業シミュレーションを行うようなものまで、さまざまな形式で行われていて、私も過去に七回ほど参加しています。
SFプロトタイピングは日本のSF関係者の間ではかなり一般的になってきましたが、Wired Sci-Fiプロトタイピング研究所の行うSFプロトタイピングは、長期にわたるプロジェクトで企業側にも主体性を持たせた活動が特徴的です。
この本には、Sansan株式会社と一年間にわたって行ったプロトタイピングの記録と、ワークショップの手法、ワークショップで使ったカードなどが収録されています。
収録された3篇の小説作品も読み応えがありますが、これらの作品の背景にどんな会話があったのか、参加したIT企業のトップたちがどんなところに気づき、物語る力をどのように行使したのかを知ることができる貴重な一冊となりました。
ぜひ手に取ってご覧ください。