お待たせしました。Gitのインストールを始めましょう。手順は以下の通りです。
HomebrewはMac OS用のオープンソースソフトウェアパッケージ管理ソフトウェアです。この説明で意味のわかる方は、1. Homebrewのインストールに進んでください。Windowsをお使いの方は、Google検索などで探してみてください。
小説Git 2:黒い画面でタタタターンでも書いたように、コンピューターの中には、アイコンがついていて独自のウインドウを持ち、マウスやタッチで操作できるグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)のアプリ以外にも、多くのソフトウェアが動いています。Gitも含め、それらの多くはプログラムのソースコードが公開されていて、誰でも組み立てて使うことのできるオープンソースソフトウェア(OSS)で、Homebrewは、そんなOSSをダウンロードしてインストールしたり、アップグレードしたりするソフトウェアです。
「なんだ、インストーラーみたいなものか」という印象を持たれたかもしれません。扱う上では「黒い画面で使うソフトをインストールするプログラム」程度に考えておけばいいでしょうが、起動したときに画面に流れる大量のログを見て驚かないように、少しだけ補足しておきます。
多くのOSSは、他の多数のOSSに依存しています。例えばプログラミング言語のPythonは以下のようなソフトウェアに依存しています。
python@3.9
├── gdbm
├── mpdecimal
├── openssl@1.1
│ └── ca-certificates
├── readline
├── sqlite
│ └── readline
└── xz
つまり、Pythonを動かすには、gdbm、mpdecimal、openssl@1.1とopenssl@1.1が依存しているca-certificates、readline、sqliteと、sqliteが依存しているreadline、xzの7つのOSSが必要になります。簡単に想像できると思いますが一つ一つをインストールしていくのでは大変ですし、何より間違いも起こります。
そこで、このような依存関係を管理するパッケージ管理ソフトウェアが必要です。ターミナルでbrew install python@3.9 と入力すると、Homebrewはレシピに従って依存する7つのソフトウェアを、必要なバージョンも確かめながらインストールします。
インストール中、ターミナルには自分が入力した覚えのないソフトウェアの名前がずらずらと並ぶことになりますが、怖がらずによく見てください。それはHomebrewが依存関係を解消するために必要なソフトウェアをかき集めているところなのです。
ちなみに、Gitの依存ツリーは以下の通り。
git
├── gettext
└── pcre2
多機能ぶりを考えると信じられないぐらいシンプルですが、それでもインストールすると、下記のログが画面を流れていきます。
==> Downloading https://ghcr.io/v2/homebrew/cor
Already downloaded: /Users/taiyo/Library/Caches/Homebrew/downloads/55b48329bd6c0c280bccbfcdd2e977bda9fba5fb7d7061e9323dae9142f3efb1--git-2.37.0.bottle_manifest.json
==> Downloading https://ghcr.io/v2/homebrew/cor
Already downloaded: /Users/taiyo/Library/Caches/Homebrew/downloads/f691c27a9f4a36e8760104c596627d982bffb4b52a2669cc5076462e12368191--git--2.37.0.monterey.bottle.tar.gz
==> Reinstalling git
==> Pouring git--2.37.0.monterey.bottle.tar.gz
==> Caveats
The Tcl/Tk GUIs (e.g. gitk, git-gui) are now in the git-gui
formula.
Subversion interoperability (git-svn) is now in the git-svn
formula.
zsh completions and functions have been installed to:
/usr/local/share/zsh/site-functions
Emacs Lisp files have been installed to:
/usr/local/share/emacs/site-lisp/git
==> Summary
🍺 /usr/local/Cellar/git/2.37.0: 1,552 files, 44.6MB
==> Running brew cleanup git…
Disable this behaviour by setting HOMEBREW_NO_INSTALL_CLEANUP.
Hide these hints with HOMEBREW_NO_ENV_HINTS (see man brew).
それでは、インストールです。小説Git 2で説明したVS Codeのインストールはお済みですか?
1. VS Codeでターミナルを立ち上げる
VS Codeを起動して、ウインドウのタイトルバーの右端に並んでいる❶パネル表示ボタン(下)をクリックしてパネルを表示させ、ウインドウの下部に現れるパネルの切り替えボタンからTERMINAL(ターミナル)をクリックすると、パネルの中には文字入力のコマンドで対話的にコンピューターを操作する環境「ターミナル」が現れます。

ターミナルに表示されている文字は、コマンドの入力を受け付けられる状態であることを示しています。この文字列のことをプロンプト、あるいはコマンドプロンプトと呼びます。
taiyofujii@iMac ~ %
ユーザー名:taiyofujii
コンピューター名:iMac
場所:~ (ホームの略称)
動作モード:% 一般ユーザー
■:カーソル
基本的なコマンドを入力してみましょう。小説を書いているときは使わなくても構いませんが、Gitのインストールやトラブルシューティングなどで、たまに必要になりますので、覚えておいてください。
最も基本的なコマンドの「cd(シーディー:change directoryの略称)」を使って、デスクトップに移動してみましょう。
yourname@yourMac ~ % cd Desktop↩️(リターンキー)
yourname@yourMac Desktop % ■
プロンプトの場所がDesktopに変わりました。日本語Mac OSのファインダーでは「デスクトップ」と表示されていますが、ターミナルでは「Desktop」と表記されます。
それでは、ホームに戻りましょう。
yourname@yourMac Desktop % cd
yourname@yourMac ~ % ■
cdの後に何も指定しなければホームディレクトリに戻ります。日本語Mac OSのファインダーではホームフォルダです。呼び方が異なりますが、ディレクトリとフォルダはほとんど同じものだと考えても構いません。ファイルを置いてある場所です。CLIではディレクトリと呼び、GUIでは書類バサミ(フォルダー)のメタファーを使ってフォルダーと呼びます。小説Gitでは両方の呼び方を、おそらく意識せずに使い分けていきます。
「ホーム」とホームディレクトリが同じ場所だということを確かめるために、「ls(エルエス:listの略)」コマンドを使って内容を一覧表示してみましょう。
yourname@yourMac ~ % ls↩️
Applications Documents Public
Downloads Movies Music
Desktop Library Pictures
yourname@yourMac ~ % ■
英語で表記されていますがMacの「ホーム」に並んでいるフォルダーがあることがわかります。
ここで、小説Gitで時々使うMac用のコマンドをひとつ紹介します。「open」という、ターミナルから、Mac OSのファインダーを通して指定したファイルを開くコマンドです。コマンドラインであなたのMacを操作できることを体験してみてください。
yourname@yourMac ~ % open .↩️(ピリオド+改行)
## ピリオドは「この場所」を意味します。
## プロンプトに示される「場所」がホームディレクトリなので、
## open . はホームディレクトリをファインダーで開け、という意味になります。
ファインダーでホームのウインドウが開きます。
それではHomebrewをインストールしましょう。
2. Homebrewのインストール
Homebrewの公式Webサイトに、インストールの方法が書いてありますので解説します。

下のコマンドをコピーして(先頭の/から最後の”まで)、ターミナルにペーストし、リターンキーを押してください。
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"
不安でしょうから、コマンドの意味を解説します。説明が鬱陶しい方は、一画面分ぐらい飛ばしてください。
先頭の「/bin/bash」で、インストールのためのスクリプト(手続き書です)を実行するプログラム、bash(バッシュ)を指定しています。bashはシェルと呼ばれるプログラムの一つで、ファイル操作やプログラムの起動に用います。
/bin/bashの後ろについている「-c」はbashの動作モードを指定しています。-cは、この後ろにある文字列を評価する、という意味を持ちます。「評価」というと難しいですが、bashを立ち上げて、”(ダブルクオート)で挟まれる文字列を入力し、リターンキーを叩け、ということになります。
ダブルクオートで挟まれた文字列は、bashで実行するコマンドです。内容は、curl(カール)を起動し、githubsecontent.comからHomebrewのインストールスクリプトをダウンロードして、$(管理者モード)で実行せよ、という意味です。
さて、実行しましょう。

==> Checking for sudo
access (which may request your password)…
Password:
すぐにこのようなプロンプトが表示されます。ここで、Macの管理者パスワードを入力してください。
==> This script will install:
/usr/local/bin/brew
/usr/local/share/doc/homebrew
/usr/local/share/man/man1/brew.1
/usr/local/share/zsh/site-functions/_brew
/usr/local/etc/bash_completion.d/brew
/usr/local/Homebrew
Press RETURN/ENTER to continue or any other key to abort:
インストールを実行するかどうかを確認するプロンプトが表示されます。リターンキー、あるいはエンターキーを押すとHomebrewのインストールが始まります。
ひょっとするとこの段階で、xcode command line toolsをインストールするか、Xcodeをインストールするか選ぶように求められるかもしれません。その場合にはxcode command line toolsを選んでください。これを機会にMacやiPhoneのアプリを作ってみたいと思う方はXCodeをインストールするといいでしょう。
==> Downloading and installing Homebrew...
remote: Enumerating objects: 498, done.
remote: Counting objects: 100% (498/498), done.
remote: Compressing objects: 100% (363/363), done.
remote: Total 476 (delta 152), reused 282 (delta 86), pack-reused 0
Receiving objects: 100% (476/476), 289.21 KiB | 50.00 KiB/s, done.
Resolving deltas: 100% (152/152), completed with 16 local objects.
From https://github.com/Homebrew/brew
8dd96ae8b..3689ecd24 master -> origin/master
Updating files: 100% (3162/3162), done.
HEAD is now at 3689ecd24 Merge pull request #13551 from Homebrew/dependabot/bundler/Library/Homebrew/activesupport-6.1.6.1
Updated 3 taps (homebrew/core, homebrew/cask and caskroom/cask).
==> Installation successful!
==> Homebrew has enabled anonymous aggregate formulae and cask analytics.
Read the analytics documentation (and how to opt-out) here:
https://docs.brew.sh/Analytics
No analytics data has been sent yet (nor will any be during this install run).
==> Homebrew is run entirely by unpaid volunteers. Please consider donating:
https://github.com/Homebrew/brew#donations
==> Next steps:
- Run brew help to get started
- Further documentation:
https://docs.brew.sh
yourname@yourMac $ ■
インストールが終了すると、コマンドプロンプトが入力待ちに戻ります。では、インストールが終わったかどうかを確かめてみましょう。
brew -v と入力します。brewはHomebrewのコマンド名です(長いですからね)。-vはバージョン表示を行う動作オプションです。
yourname@yourMac ~ % brew -v↩️
Homebrew 3.5.4
Homebrew/homebrew-core (git revision 3112e690293; last commit 2022-07-12)
Homebrew/homebrew-cask (git revision 7ba04fd629; last commit 2022-07-13)
バージョン名が表示されたら、インストールができたことになります。それではGitのインストールに進みましょう。
3. Gitのインストール
Gitの配布サイトにある、Download for Macページに、インストールの方法が書いてあります。

Homebrewのインストールは終わっているので、Homebrewでインストールする方法でインストールします。コマンドをコピーして実行します。
yourname@yourMac % brew install git↩️
==> Downloading https://ghcr.io/v2/homebrew/core/git/manifests/2.37.0
Already downloaded: /Users/yourname/Library/Caches/Homebrew/downloads/55b48329bd6c0c280bccbfcdd2e977bda9fba5fb7d7061e9323dae9142f3efb1--git-2.37.0.bottle_manifest.json
...
/usr/local/share/emacs/site-lisp/git
==> Summary
🍺 /usr/local/Cellar/git/2.37.0: 1,552 files, 44.6MB
==> Running `brew cleanup git`...
Disable this behaviour by setting HOMEBREW_NO_INSTALL_CLEANUP.
Hide these hints with HOMEBREW_NO_ENV_HINTS (see `man brew`).
yourname@yourMac % ■
バージョンを確認しましょう。
yourname@yourMac % git -v↩️
git version 2.37.0
おめでとうございます。Gitがインストールできました。
Gitの初期設定を行なって動作確認をしていきましょう。まずは名前だけで構いません。
git config --global user.name 任意の名前(英数がいいです)↩️
4. 動作確認
おつかれさまでした。それではデスクトップにフォルダーを一つ作って、Gitが動くかどうか確かめてみましょう。
サイドバーのエクスプローラーかソース管理をクリックして、サイドパネルのフォルダーを開くをクリックし、デスクトップに新しいフォルダーを作って、そのフォルダーを開いてください。流れを下にスクリーンショットで示します。




フォルダーを開くと、前回のインストラクションでも表示されたアラートが現れます。たった今作ったフォルダーですので安心して「はい、作成者を信頼します」ボタンをクリックしてください。

エクスプローラーでファイルをひとつ作り、何か書いて保存しましょう。

Gitの動作確認からは外れますが、ここでタイムラインをクリックすると保存したファイルの履歴が一覧できます。自動保存していると、ほぼ全ての編集履歴をこの「タイムライン」で追いかけることもできますので「あーっ! さっき消しちゃった文章どこだー!」と探すような時は、エクスプローラーのタイムラインを探してみましょう。
本当にお待たせしました。それでは、新しく作ったフォルダーをGitで管理しはじめます。
アクティビティバーのソース管理をクリックし、サイドパネルのリポジトリを初期化するをクリックします。Gitは管理するファイル群のまとまりを「リポジトリ」と呼びます。

初期化を行うと、サイドパネルの内容が変わります。

それぞれの意味合いはこれから小説Gitで説明していきますので、まずは「バージョン管理」を試してみましょう。

ファイルの横にマウスポインターを移動させ「+」ボタンをクリックします。

ファイルが「変更」タブから「ステージされている変更」に移動します。この操作を「ステージング」と呼びます。ステージにされた変更に名前をつけてコミットします。ここでは「プロローグ冒頭」と名前をつけ、コミットをクリックします。
何が起こっているのかわからないので辛いと思いますが、ファイルを修正して、再度「ステージング→コミット」をしておきます。同じ名前でコミットしても構いませんが、別の名前に変えておきましょう。

ここでターミナルを開いて、git log↩️を実行してみましょう。

ターミナルには以下のようなテキストが出てきて、二つの状態があることがわかります。
yourname@yourMac 傑作 % git log
commit 53f582de2ff7472af9df2503deb8b45dc23d0c46 (HEAD, main)
Author: Taiyo Fujii <taiyo@taiyolab.com>
Date: Wed Jul 13 10:27:59 2022 +0900
言い切りに変更
commit 889989364af1369562f82a78d8f7662fa255bae3
Author: Taiyo Fujii <taiyo@taiyolab.com>
Date: Wed Jul 13 10:18:08 2022 +0900
プロローグ冒頭
yourname@yourMac 傑作 %
ここで、以下のコマンドを実行してみてください。色文字で示したcheckoutの後ろには、git logで出てきたハッシュを入れます。
git checkout 889989364af1369562f82a78d8f7662fa255bae3↩️

ファイルの状態が「プロローグ冒頭」に戻ります。Gitによるバージョン管理の第一歩です。次回からはVS Codeの機能拡張を用いたバージョン管理へと進んでいきます。
