8月にTitan Booksから刊行されるBig Bad Book of Kaijuに短編を寄稿しました。7,400ワードほどの長めのショートストーリーです。日本語にすると15,000文字で原稿用紙にして50枚ほど。文字の数だけ見ると文芸誌の短編程度の分量です。内容は公式サイトにサマリーが出てからお伝えします。
ビッグブックというのは、その名の通り分厚くてでかい本です。アンソロジーで名前を聞くことが増えてきましたが、1,000ページ近いものも少なくありません。私の「コラボレーション」を収録している写真のBig Book of Cyberpunkは2,000ページの二段組です。これほど分厚くなるかどうかわかりませんが、今回のBig Bad Book of Kajuは400ページで24の作品が掲載される予定です。たっぷり楽しめそうで、なんとお値段は$29。日本の方が本が安いと思っていたんですが、このボリュームの本が4,500円ほどなら日本とそう変わらないし、物価を考えるとロサンゼルスで食べるコーラなしのハンバーガーより安いので、お手軽感がありますね。

昨年の4月、このブログのフォームを通して、編者のHenryからオファーを受けました。来年(2026年)カイジュウに関するアンソロジーを出したい、ついては何か書いてもらえないかとのことでした。英語版の書籍・電子書籍オーディオブックのみ、独占期間はn年(あんまり長くありません。年鑑アンソロジー掲載、自選短編集への掲載は除外)、ギャラはSFWA(SF作家協会)の基準を下回らないという、よくあるオファーです。
この形式のオファーで書いた場合、日本語や他の言語への翻訳出版は独占期間内でも可能になるし、コミカライズや舞台などの翻案も縛られません。契約書になるときは、原典が参照できるようにクレジットを入れるように、という一文が挟まれるけど、クレジットを入れないなんていう選択肢はもとよりありませんから気にしなくていい。一も二もなく引き受けることにして、その時浮かんだプロットを提案しました。手掛けている長編を舞台に、外国人側の視点で描いて、カイジュウを出すストーリーです。いいんじゃないの? と言うところで翻訳の話が出てきました。
翻訳家は出版社が用意する話で進んでいました。全員に翻訳が必要だったりするとコストも馬鹿にならないけど、参加する作家で翻訳が必要なのは私一人だけでしたし、それも30枚程度(一万文字ぐらい)なら目くじらを立てるような金額でもないのでしょう――でもそこで魔が差しました。
英語で書いていいですか? と尋ねてしまったのです。滑らかな英語が書けるわけじゃないし、それほど英語の小説を読んでいるわけでもないので、引き出しも少ないのに。
しかしこの舞台なら取材は終わっているし、英語の文献もそれなりに読み通しています。主人公にする人物が描いた手紙も読んでいます。実は英語でまとまったフィクションを書くのは初めてではありません。書いただけではなくて、レビューを通してゲラの確認まで進んでいます。「三光年の孤独」と題した探査機主人公の小説で、未来学関係の冊子がアメリカの大学から出る予定でした。多様性を題材にしたその冊子は諸般の事情で予算が降りず、話が立ち消えになってしまったのです。生成AIが関係するとても面白い話なので、こちらもどこかで公開したいのですが、一度は書いたことがあるので、なんとかなるのはわかっていました。
ゴツゴツしたナレーションやダイアローグが許されるフィクションの書き方も知っています。「三光年の孤独」は探査機を主人公に据えました。モノローグは生成文ですから不自然でも納得という仕掛けです。今度は書き慣れていない人の日記をフィクションとして読んでもらう方法を選びました。途中で滑らかな描写を出せばいいコントラストにもなるし、そういう技術は日本語と変わりません。曲がりなりにも十年書いてるので、そちら方面の引き出しはあります。
もっとも、家族の介護で鬱っぽくなっていた時期で、長編が進んでいなかったから、何か違うことをしたかったのかもしれません。とにかく「いいんじゃない? 助けるよ」とのことでしたので意気揚々と書き始めました。よく考えてみれば、編集者なら「いいんじゃない」と言うよね。ダメなら翻訳家に頼めばいいわけだし。
そんなこんなで、日本語で途中まで書いた原稿を英語で追いかける形で、昨年末に島と東京を行き来しながら完成させました。AI生成ダメ絶対案件だったので出力は全く使っていませんが、AIには大いに助けられました。教師に見立てたGPTと、表現を参考にした小説を分析したり、当時の言い回しを聞かせてもらったりして、その作品を書くためにしか使えないような英語力を鍛えました(もちろん少しは普通の英語も上手くなったとは思います)。novel-writerにもちょっとだけ手を入れて、英語を書くのを楽にしたりもしました。仕上がった作品はなかなかのものです。
ぜひ日本でも紹介したいのですが、英語で書くと日本語の原稿がないのが悩みどころ。「三光年の孤独」も途中までは日本語があるのですが、乗ってくると英語で書くので、そこから先は半端な原稿だけになります。どちらもエピローグの原稿はないし、日本語部分も翻訳前提で書くから出版するなら書き直したいですね。固有名詞や思いついたフレーズなんかは英語で書いていたりするから。
先日、出版社のコピーエディット(校正)も終わりました。ゲラの確認をしたら、あとは出版を待つだけです。予約してくださるのも嬉しいのですが、何せこれはビッグブックです。お近くの図書館に蔵書をお願いしてみてください。
The Big Bad Book of Kaiju
Seventeen city-smashing stories of giant monsters
ISBN:9781835417515
Format: Hardback
Pages: 400
Published:
25 Aug 2026 (US)
25 Aug 2026 (UK)
Dimension:
9.25″ x 6.13″ (US)
234mm x 153mm (UK)
Editors:
Jonathan Maberry
Henry Herz
Writers:
Tananarive Due
Christopher Golden
Luke Dumas
Scott Sigler
Ai Jiang
Alma Katsu
Seanan McGuire
Kevin J. Anderson
Maurice Broaddus
Kane Gilmour
Lee Murray
Jeremy Robinson
Tobi Ogundiran
Tim Lebbon
Daniel Golden
Taiyo Fujii
Linda D. Addison
Maxwell Gold
Jamal Hodge
Cynthia Pelayo
Anne Walsh
Kelley Armstrong
Ben Spada
Editors:
Jonathan Maberry
Henry Herz
