文芸春秋社のデジタル誌、別冊文藝春秋の一月号に「オーギュメンテッド・スカイ」の第二話が掲載されました。
この作品は、私が十五歳の春から十八歳まで過ごした、鹿児島の進学校錦江湾高校の男子寮をモデルにしています。一年生、二年生、三年生が同じ部屋を使うその寮では、畳一畳分の2段ベッドが左右の壁に作り込まれた寝室と、廊下を挟んだ向かい側にある学習室のテーブルの上だけが、プライベートと呼べる場所でした。

部屋のミッションは三年生の受験を成功させること。そのために、一年生と二年生の生活は費やされます。身辺のことは自分でやるルールでしたが、公共スペースの清掃や配膳は二年生の監督で一年生が手を動かす、擬似軍隊です。寮は学校の敷地に隣接しています。ひとたび桜島が噴火すれば一年生たちは授業を中座して寮に走って戻り、ベランダに干してある上級生の洗濯物を部屋に入れなければなりません。上級生の衣類に火山灰をかけてしまおうものなら、風紀委員に呼び出されて説教されてしまう――そんな生活です。
1980年代ですら時代遅れだと言われていた、そんな寮にいたことを文藝春秋の編集者に話したところ、その場所をモデルにして一つ書けないか、と提案されました。
「面白くなりますか」
「絶対、面白くなります」
ということで、始まりました。
設定は2024年。ドローンを飛ばせば手が届きそうなほどの未来です。設定しました。学校の名前は鹿児島県立南郷高校。寮は蒼空寮。そこで集団生活を送る寮生たちは、受験と集団生活、そしてバーチャルリアリティコンベンション、略して「バーチャコン」に取り組んでいました。
蒼空寮は集団生活のメリットを生かした精密な立体モデルで全国大会優勝をはたしたこともある名門チームなのですが、この年は成績がふるいません。過去の栄光に寄りかかった構成が退屈だったのか、それとも周りの腕が上がったのか――寮が失意に包まれる中、主人公の二年生倉田マモルは、来年の次期寮長の指名を受けます……
Kindle Unlimitedでも読めるようですので、是非ともご覧ください。