パネル: 脱植民地化に向けて

成都ワールドコン2023で登壇した最初のパネルディスカッションは、脱植民地化に向けて:英語SF圏の影から抜け出す戦略と方法でした。

登壇者はシーザー・サンティバネスズイ・ニン・チャンフランチェスコ・ヴァーソ。司会は私が担当しました。私にとってはワールドコンで初めての司会であり、そして最も素晴らしいパネルディスカッションになりました。

テーマである「英語SF圏からの脱植民地化」は、35の国や地域から、100名を大幅に上回る作家や編集者、出版人を呼び寄せて国際的なコンベンションとなった成都ワールドコンの極めて重要なテーマの一つです。

冒頭私はアイスブレイクのために、ディスカッションのタイトルが中国語と英語で大きく異なっている子を指摘しました。中国語版の「世界科幻文学的多元的未来」には「脱植民地化」という言葉が孕む意味合いは含まれていないのです。私はそのことを指摘して、パネルディスカッションは英語版に沿って行うことを宣言しました。

参加者の自己紹介を行った後、私は、日本人が中国SFに出会った話を紹介しました。日本のSF界は、中国の現代SFが1970年代後半に始まっていたことを、岩上治(林久之)氏によって知らされていました。岩上さんは私たちのコミュニティのために何十年もの間、冊子で翻訳を含む紹介を続けてくれましたが、私たちは隣国の動向にあまり注目していませんでした。状況が大きく変わったのは、2015年と2016年です。ケン・リュウが英訳した劉慈欣の『Three Body Problem』と、中国作家アンソロジーの『Invisible Planets』がヒューゴー賞を受賞してようやく、私たちは隣国に目を向けました。英語で舗装された道を通って中国のSFを発見したのです。これこそが植民地化です。もちろん、ケン・リュウが植民地にしたわけではありませんし、ワールドコンのコミュニティも違います。しかし、私たちの関心やマーケティングは英語SFという発想で植民地化されてしまっていたのです。

そんな話をした後で、私は登壇者に「あなたたちがどのように植民地化されていたのか、教えていただけますか?」と尋ねました。

なんとも魅力的な時間でした。シーザーは「アンデス未来派」活動や、マジック・リアリズム・マーケティングの理不尽についてユーモラスに語り、ズイ・ニンは自身の経験を交えて語ってくれた巨大なコモン・ウェルスの問題を報告してくれました。近年のコンベンションでは欠かせない存在となったフランチェスコは、英語の橋を通らない翻訳出版を行なっているフューチャー・フィクションついて語ってくれました。

このブログで語りきれなかったことは、フォン・チュアンが 𝕏.com.でまとめてくれています。ぜひお読みください。

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