短編「木星風邪」を『ポストコロナのSF』に寄稿しました

ポストパンデミックSF短編「木星風邪(ジョヴィアンフルゥ)」を、4月15日に早川書房から発売されるアンソロジー『ポストコロナのSF』に寄稿しました。

ポストコロナのSF: 早川書房

舞台は様々なインプラントの助けで太陽系全域に生活圏を広げた23世紀の木星。
月面都市で生まれ、木星大気に浮かぶ鉱山都市に生活の場を移した春馬(ハルマ)は、通勤に向かうトラムの停車場で、女性が倒れるところに遭遇する。インプラントのメモリ管理を行なっていたプログラムが変異して生まれたコンピューターウイルスが、全身のインプラントを侵し、ショック症状に陥ったためだ。宿主になった人間が体を折り、くずおれる瞬間、GCE-73と名付けられたそのプログラムは、近接無線ネットワークに乗って周囲に拡散する。
まるで感染症のように振る舞うこの異変を「木星風邪」と呼ぶ者がいた……

という、30枚ほどの短い作品です。書店で見かけたら、是非とも手に取ってください。

林譲治さんが日本SF作家クラブの会長を務めていた昨年の夏に持ち込んだ企画なのですが、アンソロジーとしても魅力的で、巻頭言は現会長の池澤春菜さん、巻末のエッセイは日本SF作家クラブの法人化に尽力し、林会長を補佐した鬼嶋清美前事務局長。作品と作家を紹介するのは先日会員になった宮本道人さん。寄稿作家は以下の19人70作あまり(北野勇作さんの「不要不急の断片」はマイクロSF集です)。クラブの編集とはいえ、会員でない作家の皆さんも大勢いらっしゃいます。

小川哲「黄金の書物」/伊野隆之「オネストマスク」/高山羽根子「透明な街のゲーム」/柴田勝家「オンライン福男」/若木未生「熱夏にもわたしたちは」/柞刈湯葉「献身者たち」/林譲治「仮面葬」/菅浩江「砂場」/津久井五月「粘膜の接触について」/立原透耶「書物は歌う」/飛浩隆「空の幽契」/津原泰水「カタル、ハナル、キユ」/藤井太洋「木星風邪(ジョヴィアンフルゥ)」/長谷敏司「愛しのダイアナ」/天沢時生「ドストピア」/吉上亮「後香(レトロネイザル) Retronasal scape」./小川一水「受け継ぐちから」/樋口恭介「愛の夢」/北野勇作「不要不急の断片」

「ポストコロナのSF」 Amazon.co.jp商品ページより

もう少し落ち着いた頃に出ると思っていたのですが、まさか緊急事態宣言に匹敵するような状況になっているとは……。

パンデミックを直接扱う小説を書くのは「木星風邪」で三本目になります。今回の作品は、COVID-19を扱った過去の二作品から大きく趣を変えて、ウイルスそのものに注目してみました。どうぞお楽しみください。

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